「障害」と「ひきこもり」
●スマホを閉じよフィールド(畑)に出よう!
かつて劇作家の寺山修司は、「書を捨てよ町へ出よう!」というメッセージを当時の若者に送りました。
本(知識や過去の知恵)ばかり読んでいないで、現実の社会(町)へ出て、自分の体験や感性で人生を
切り開け」と主体的な行動を促したのです。そして今、私たちは「スマホを閉じよフィールド(畑)に出
よう!」と訴えます。
差別やネグレクトなどの虐待をうけ、尊厳を傷つけられた経験が重なれば誰でも自分を「守る」ために
人との交わりを遮断したくなります。それほど直接的な挫折体験が無くても、心の不安定がもたらす何
となく感じる不安や悲観、自信喪失、さらには他者への怒りなどがきっかけとなってひきこもりが始ま
ります。そしてひきこもりの難しさは社会や時に家族とさえ接点を失うがゆえに一度ひきこもると無気
力だけが再生産される日々が続き自分の意志の力だけで「抜け出る」ことが難しいというところにあり
ます。
私たちが「ひきこもり」にこだわり続けるのは、それがある種の精神疾患の症状であったり、発達障害
のある人が、その特性に対する周りの無理解で、不適応を起こし二次障害としてひきこもりになってし
まうことが少なくないことを知るからです。多くの障害のある人は、その障害特性によって生きにくさ
や働くことの難しさがあり、自立した生活や社会参加がしにくいという現実に直面しています。ひきこ
もりの前にある大きな壁こそ、その「現実」に他なりません。当事者はそこからの脱出を望んでいます
が、その先の場所がなかなか見えてこないのです。
●ひきこもりの鎖を断つとは
ひきこもりからの「脱出」を働きかけることは、むしろ本人の焦燥感を掻き立てるだけに終わりかね
ません。「ひきこもり」とは、社会集団からこぼれ落ちた状態を表す言葉ですが、多くの場合その当事者
は、自己嫌悪におちいり自分を責め続けています。そこから「引っ張り出す」というアプローチだけでは
容易に解決するものではありません。
時に、障害福祉サービスの場でさえ通いきれないということは往々にしてあります。しかし、そこが自
分の抱える問題を「直す」場ではなく、自分のやれることが何かを見い出せる場であり、お互いの関わり
合いの中で自らを変えていくきっかけを作れる場であったなら、もがき絡んだ鎖から解き放たれることも
可能になると考えます。そこでの支援者の果たす役割は、そのような環境を整えることですし、当事者の
ほんのちょっと先の将来のイメージを一緒に考えることであると思います。
●陽の光の下で大地を耕すということ
私たちは、それを農業の場に見出したいと考えています。ひきこもりにきっかけがあったように、そこ
から抜け出すためのきっかけづくりをしたいのです。他の仲間たちとともに、大地を耕し、種をまき、苗
を植え、花が咲き実をつけるなどの植物の成長にかかわりながら収穫の日を待ちます。陽の光を浴び、風
を受け、雨の恵みを感じながらの作業は、自然の中で自然と共に生きているという一体感を生み出し、障
害がある人もない人も同じ大切な命であることに気づかせてくれます。収穫にいたるまでの一つひとつの
変化は手応えとして実感でき、その作物をお客さまのもとへとお届けすることは大きな自信につながりま
す。農業の向こう側には収穫した作物を購入し、食卓で味わってくださる人々が居るのであり、よろこんで
食べていただけたということにより自己有用感を持つことができるのです。
●キャロットハウスが目指すもの
就労継続支援B型事業所キャロットハウスは、そうした人たち一人ひとりの希望や意思を尊重しながら、
適性や障害特性に配慮した仕事を提供することで「仕事が楽しい」「仕事ができる」という経験を重ねてい
く場になりたいと思います。そこで自分に自信を持ち、さらにできることを増やしていこうとする意欲を高
めていくことで生きがいを持ち、自立した生活をしていく力をつけていくことを目指したいのです。
自分の活動に目的を見出し主体的に取り組んで行くこと、そして、自らの人生を自らの手で決定し歩んでい
くという自己実現のプロセスへの支援こそが私たちの使命であると考えています。
終わりにもう一度繰り返します。「スマホを閉じよフィールド(畑)に出よう!」
(文責kujira)
2026年04月15日 17:31